千夏(ちな)雑記

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確率論の基礎概念個人用まとめ2

今回は確率変数について書いていきます。前回の確率空間編も読んでね。

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 確率変数

以下確率空間 (\Omega.\mathcal{F},P)を固定します。このときまず確率変数を定義しましょう。

Definition (E,\mathcal{E})を可測空間とする。関数 X:\Omega\to E \mathcal{F}-可測であるとは、任意の A\in\mathcal{F}に対して\begin{align}X^{-1}(A)\in\mathcal{F}\end{align}が成り立つことをいう。 \mathcal{F}-可測な X:\Omega\to E E-値確率変数という。 E位相空間のときは \mathcal{E}=\mathcal{B}(E)のときを考える。特に E=\mathbb{R}のときは単に確率変数という。

さらに確率論特有の記号をいくつか整理しておきましょう。

Notation Xを確率変数とする。\begin{align}\{X\in A\}&:=X^{-1}(A)\quad(A\in\mathcal{F}),\\P(X\in A)&:=P(\{X\in A\})\quad(A\in\mathcal{F}),\\P(a\leq X\leq b)&:=P(X\in[a,b])\quad(a<b)\end{align}と表す。

あとはよく使うであろう確率分布も一緒に定義しておきましょうね。

Definition X E-値確率変数とする。このとき Q:\mathcal{E}\to[0,1]を\begin{align}Q(A):=P(X\in A)\quad(A\in\mathcal{E})\end{align}と定めればこれは (E,\mathcal{E})上確率測度になっている。この Q Xの確率分布といい P\circ X^{-1}で表す。

一応 Q (E,\mathcal{E})上の確率測度になることはしめしておきます(ほかに書くことがないので)。

Proofまず Q(E)=P(X\in E)=P(\Omega)=1となるので確率測度の定義(1)を満たすことがわかります。次に \{A_i\}_{i=1}^\infty\subset\mathcal{E}が互いに素であるとします。このとき i\neq jに対して、\begin{align}\{X\in A_i\}\cap\{X\in A_j\}=\{X\in A_i\cap A_j\}=\{X\in\emptyset\}=\emptyset\end{align}となっているから、\begin{align}Q(\bigcup_{i=1}^\infty A_i)&=P(X\in\bigcup_{i=1}^\infty A_i)=P(\bigcup_{i=1}^\infty\{X\in A_i\})=\sum_{i=1}^\infty P(X\in A_i)=\sum_{i=1}^\infty Q(A_i)\end{align}が成り立つ。 \Box
まとめ

今回は短いですがここまでにします。確率変数に対して成り立つ定理等はまた機会があればということで。

次回、いよいよ期待値を定義していきます。よろしくお願いします。

 

参考文献
  1. 谷口説男, 『確率微分方程式』, 共立出版, 2016