数学記事を書く練習がてら、この前見つけた面白いなーと思う証明を書いていきます。よろしくお願いします。
まずは証明したいことの主張を見ていきましょう。
を満たす数列に対してである.
これはわかりやすく書くと「を示せ」ということです。じゃあどうやって示すのか?極限の値を求めるのは実は結構簡単で、求めたい極限をとでもおけば漸化式よりという方程式が成り立ちます。これはすなわちとなるxを求めればよいのですが、であることからが解になることは明らかです。*1なのでが示されました!!!!!!
なのですが、ここでちょっと待ってほしい。「求めたい極限をとでもおけば」………本当にこの数列は極限を持つのでしょうか?????それを実際に見ていきましょう!……とはいえ「は?になるって書いてあるんだから存在するだろ常考…」と思う人もいるでしょう。なぜ極限が存在するかを示すのか…それは「一般項を考えられない(もしくは考えるのが難しい)」からです。例えば具体的にという数列というのは具体的な計算でその極限を求めることができます。またという数列も具体的な計算でその極限が存在しない(発散する)ことが分かります。このように具体的数値が分かっている数列ならばその極限の存在性の判断が(ある程度)容易に計算だけで判断がつきます。しかし、そんなに世の中の数列は甘くありません。具体的な値がわからないことのほうが多いです。それじゃあ今回の数列も一般項を求めればいいんじゃね?となりますが、私にはよくわかりませんでした。*2それじゃあ別のアプローチを使って極限の存在を言えばよくね?という感じで証明を考えていきます。
とはいえ数列の極限の存在を言える定理って割と限られています。それは
ぐらいでしょうか。ほかにもあったかもしれませんがぱっと思いつくのはこれぐらいです。1はいわゆる実数の完備性と呼ばれるやつですね。しかしこれは計算が面倒くさいのでやめることにします。次に2と3は実数の連続性ですね。これは各項間の差を計算して有界性を示せばいいだけですから簡単そうです。もちろん形から3のほうを示せばいいという方針が立ちます。それでは実際に計算していきましょう!(ここからがメインです)
単調増加性
単調増加というのはその字のごとく「すべての項がその1個前の項よりも値が増えている」ことです。それを見ていきます。まず最初にとその次の項の大きさ比べです。これは指数関数のよく知られた性質「に対して」とからがわかります。次にこれと再び指数関数の性質を使ってがわかります。そうすればまたこれからが得られ…の繰り返しです。これで単調増加であること、すなわち「」であることが示されました!
有界性
上に有界というのは「すべての項よりも大きな数が存在する」ということです。これを見ていきましょう。今回は具体的に「すべての項が2よりも小さい」ということを示していきます。まず最初にということは明らかです。次にこれと上でも用いた指数関数の法則を使えばが得られます。またこれからが得られ…の繰り返しです。これですべての項が2よりも小さいことが示されました!
はい、これで数列が上に有界な単調増加列であることが示され、極限の存在がいえました!…いかがでしょうか。この証明の美しいところは「帰納的に指数とルートの性質をうまくつかい簡単に示すことができる」ところだと思います。実際2という数字もうまく働いてくるところもとてもすごいと思います。
これの一般化として、「が収束する最大のは何か」という問題があるんですけど、それについては鯵坂もっちょ氏の記事を参照ということで。
この記事でも語られてるんですけれど、実はその最大値がで、これを数値計算してみると1.44466786101…でもちろんみなさんご存知のようには1.41421356…であることから最初のという数値は結構ギリギリなところでありこれもすごいなーと思いました。
今回の記事は「計算が簡単にできて美しい証明」のご紹介でした。皆さんも証明で実際に手を動かして計算してみてはどうでしょうか。